こんにちは。服部国際奨学財団事務局です。
今回紹介する奨学生は遠い国から日本に来て日々勉学に励む留学生です。
彼の夢への強い決意や、より良い社会を作ることへの責任感が感じられるお話をたくさん聞くことができました。
以前よりも家で過ごす時間が圧倒的に長くなっている今、
勉強や仕事へのモチベーションを維持することが難しいと感じている人もいらっしゃるかもしれません。
そんな方こそ是非このインタビューを読んでみてください。
きっと活力を分けてもらえると思います!
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第11期服部奨学生・アベベ テフェリー
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科
修士課程 国際関係学専攻
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◆まずは簡単な自己紹介をお願いします。母国での生活について少しお話を聞かせてください。
アベベ テフェリーと申します。27歳で、エチオピア出身です。エチオピアでは首都アディスアベバに兄と姉と一緒に住んでいました。私には幼い頃から「エンジニアになってテクノロジー企業で働きたい」という夢がありました。私は一生懸命に勉強することや、高い知識や教養を持つ人達から学ぶことが好きです。そして、自分自身はいつまでも謙虚でいたいと思っています。私はエチオピアで最も優れた大学であるアディスアベバ技術研究所(Addis Ababa Institute of Technology)に入学し、土木工学を専攻しました。本当は情報科学かプログラミングについて勉強をしたかったのですが、訳あって土木工学に落ち着きました。土木工学の勉強は楽しく、現在の大学院での研究の土台になっています。

◆ありがとうございます。エチオピアでの生活について、もう少し詳しく聞かせてください。
私はエチオピアの小さな町に生まれました。3人の兄と2人の姉がおり、私は末っ子として育ちました。父は自身が限られた教育しか受けられなかったことから、私達の全員が十分に教育を受けられるよう、一生懸命働いてくれました。私が2006年の夏に兄や姉の後を追って首都アディスアベバに住むようになるまでは、よく父の仕事を手伝いました。家の仕事は、野外での仕事も、屋内での仕事も手伝いました。アディスアベバでは、兄と姉以外の知人がいませんでした。そのため長い間孤独を感じて過ごし、いじめられたこともありました。「お前の居場所はここではない」とまで言われました。そのような状態の中で故郷に帰りたいと思ったこともありましたが、それでも周囲からの攻撃に負けず、前に進み続けました。挑戦から逃げ出すのは臆病者のすることだと思っており、私はそうはなりたくなかったからです。時間が経つにつれて友人もできました。今では彼らは生涯の友人であり、自分にとって家族のような存在です。友人とサッカー等をして遊んだりもしましたが、ほとんどは勉強や家事の手伝いをして過ごしました。当時学校での成績は優秀で、数字や物理などが特に得意でした。そのため周囲からある程度尊敬されるようになり、受け入れられるようになりました。
そして、人生の新たな章に突入します。以前アディスアベバに引っ越した時のような挑戦がまた始まりました。アディスアベバの大学を卒業し、2015年9月20日に日本に引っ越したのです。これこそが本当の挑戦でした。食べ物・言語・人々・インフラ・制度など、日本のあらゆることが新鮮でした。できる限り日本での生活を楽しみました。日本文化・日本社会は均質であると言われていますが、その中でも未だに発見があります。日本人の誠実さ、友好的な気質、勤勉さに影響を受け、私は忍耐強く野心的な、新しい自分になることができました。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に入学するまでは、日本で働きながら、教育を受けるための機会を探していました。そして2019年3月に、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の援助を得て、服部国際奨学財団の奨学生になれることが決まり、勉強を続ける機会を手にしました。これは、自分の人生で起きた最高の出来事の1つでした。
◆服部国際奨学財団の奨学生に選ばれたと知った時、どう思いましたか?
嬉しさで胸が一杯になりました。とても驚きましたが、この素晴らしい機会を手にできたことについて、神様や、服部国際奨学財団の方々、国連難民高等弁務官事務所の方々に感謝をしました。そして、ここで名誉挽回したいと思いました。それまでの3年間勉強から遠ざかっていたことで、自信を失いかけていたからです。自分が人生でそんな時期を迎えるとは考えもしませんでした。自信を取り戻し、また進むべき道に戻って来られたと思いました。
◆どのように服部奨学金を使っていますか。また、服部奨学金はどのようにあなたの人生に影響を与えていますか。
日本で学費と家賃を払うのは、本来自分には不可能です。それが、私が奨学金をいただく機会を探していた主な理由です。服部奨学金のおかげで学費を払うことができており、生活にかかる支出の一部にも服部奨学金を充てることができています。家賃の支払いを滞納することなく、自身の研究に集中することができています。そのおかげで、現時点での学業面での成果には満足しています。経済的な心配に気をとられることなく勉強することができ、大学院に入学した初めの学期には成績優秀者にも選ばれました。
◆服部奨学生や服部国際奨学財団の印象を教えてください。
服部国際奨学財団のコミュニティーは、とても友好的で、家族のような本物の人間関係であると思いました。また、それぞれに素晴らしい人間性を感じました。選考から新奨学生証書授与式やその他の行事に至るまで、大きな家族の一員であるかのように感じました。服部奨学生の皆さんや事務局の方々はそれぞれ様々なバックグラウンドがあるのにも関わらず、とても話しやすく、楽しく話をすることができました。新奨学生証書授与式では何人か友人を作ることもできました。服部国際奨学財団の方々の暖かい歓迎とおもてなしに感謝しています。
◆服部国際奨学財団の行事の中で心に残っている出来事はなんですか。
忘れられない出来事といえば、新奨学生証書授与式でのことです。行事当日は奨学生や財団関係者等たくさんの人がいらっしゃっていました。そのような場面でとてもわくわくしていたのですが、服装のことでとても恥ずかしい思いをしました。ドレスコードを勘違いしており、スーツを着てくるべきであったにも関わらず、カジュアルな服装で会場に来てしまったのです。事務局員の方がスーツを貸してくださったおかげで少し気持ちが楽になり、その日は無事に過ごすことができました。OBOG会関東支部にも、現役奨学生のボランティアとして参加をさせていただきました。そこでは受付で参加者にネームホルダーを渡す役割を担当させていただき、行事の運営・ゲストの迎え方等を学ぶことができました。このOBOG会においては、新しい出会いがあったり、他の参加者と今までの人生について話をしたりと、とても楽しい時間を過ごしました。

◆服部奨学生の仲間に伝えたいことはありますか。
世界には、勉強して社会に貢献したくても経済的な理由でそれが叶わない若い人達がたくさんいます。自分自身の知識を高めることができる教育の機会を手にしている私達はとても恵まれています。私達がこの機会を活かして、この世界をより良い場所にしていかなければいけません。そのためには、自分の時間を一生懸命働くことに使い、人一倍の努力をすることが必要です。今手にしている機会が人生に一度きりの逃してはいけないチャンスである可能性もあるのです。
◆大学院ではどのようなことを勉強していますか。大学院を卒業した後の進路についてはどう考えていますか。
私は早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で国際関係を専攻しています。研究分野は、廃棄物処理業における環境アセスメントについてと、発展途上国における環境保全についてです。これらの研究は、「持続可能な開発目標(SDGs)」を推進・達成することを目標としています。
(参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
修士過程を修了した後は、是非研究を続けたいと思っています。そして博士課程を取得し、世界銀行や国際連合機関やその他の国際機関などの開発機関でデータアナリストとして働きたいです。私はもっと勉強をして知識を深め、あらゆる廃棄物による環境汚染のような、世界が抱える社会的ジレンマの解決に役立てたいと思っています。教育や技術により、次の世代のためにより良い未来を作っていけると信じています。
